さて、今回は個人的な事を書かせて頂きます。
春は、出会いや別れなどがあり、心が落ち着かない時期でもありますね。
我家にも、別れの春がありました。
二月十五日に息子が福井県の永平寺へ修行に旅立ちました。二日間は門前のお寺で作法を習い、 十八日の早朝に永平寺の山門に立ち続け、入門を請いました。
『この冬一番の寒さ、氷点下の中、網代笠に黒染めの衣、わらじ姿で雪が舞う中、長時間立ち続け、 入門を許された。』という福井県の新聞記事と写真を見つけました。
山門の杉木立、雪の永平寺、豆つぶ程の若い修行僧達の中に息子の小さな後ろ姿を見つけ出し、本当に行ってしまったんだなぁと 涙があふれました。
十五日に新幹線のホームで見送りました。
一人で永平寺に向かい、門前の宿に一泊して、おかみさんに見送ってもらいました。後日、息子が着て行った服や靴、携帯電話や財布などと一緒に、出発前の修行僧姿の写真が送られてきました。
想像ができない程の厳しい修行に、短かくて三年半、住職の資格を取るには6年間 頑張らないといけません。

ここに来るまでに色々な事がありました。
息子は姉二人の末っ子長男で、寺の子として、何となく周囲の期待を感じながら悩んできたと思います。
高校、駒澤大学、永平寺というレールに反発し、高校は中退してしまいました。
小学校、中学校の体育祭では、応援団長をする程活発だったのに、高校へは興味がなく、 とうとう辞めてしまいました。
そして次の日からは、建設作業員として休まずに三年半程働きました。
たくさんの大人と関わり、仕事をさせて頂き 社会勉強をさせてもらったようです。
主人は息子に「本当にしたい事を見つけて頑張りなさい。応援しているから。」と言っていましたが、 私の方があきらけきれずに、「仏門に導かれますように…」と願いながら、只々、息子に弁当を作ることしかできませんでした。
いつも主人から、「期待をするな、幻滅もするな、現実は真実だ。ありのままを受け入れてやれ」と
言われていましたが。涙の出る日々でした。
しかし、転機はやってきました。
昨年の秋に息子から「永平寺に行くよ」と言われ、私以上に喜んだのは主人でした。 次の日から毎朝5時からのお勤めを息子も一緒にし、正月には親戚一同で断髪式をし、 中学の野球部以来の丸坊主になり、顔つきもかわってきたようです。
人生、無駄な事は何一つなく、振り返って見て、良い方向に物事を考えていければ…と思います。
私事ですみませんが、一つの春を迎えました。

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